相続解決事例

solved case

No.24 銀行が紛争にした相続人17人の相続を円満に解決(宇都宮市)

ご相談内容

ご相談者Aさんは宇都宮市の方で、以前に遺言書作成をお手伝いしたことがある方のご家族でした。

突然横浜の叔父B(亡父の弟)から、叔母(亡父の妹)が亡くなって相続が発生したので協力してほしいと言われたので、相談に乗ってほしいとのことでした。

  • 被相続人:叔母(生涯独身)
  • 相 続 人:姪A(依頼者)、叔父B、他15人
  • 遺  産:預貯金

叔父Bさんからは「被相続人の面倒を見ていた弟Cに全て相続させたい。終わったら若干の謝礼はするし、信託銀行に手続を依頼したので任せてほしい」と言われたということだったので、信託銀行であれば心配いらないでしょうとお答えして、このときは終わりました。

1年後、Aさんから再度お電話がありました。

お話を聞いてみると、あの後某信託銀行から連絡があり、遺産整理業務の契約をしたそうです。すると信託銀行から「面倒を見ていたCが全財産を相続する」という遺産分割協議書が届いたため、特に異議もなく押印して印鑑証明書とともに返送したとのことでした。

しかし他の相続人から信託銀行に対して遺産開示の請求があり、信託銀行は半年以上遺産資料を出し渋っていましたが、先日各相続人に遺産目録が送付されてきたのだそうです。

そこには遺産として6000万円以上の預貯金があると書かれていたため、相続人のなかで大騒ぎになりました。Aさんはすでに押印した遺産分割協議書を信託銀行に送付していることもあって、再度ご相談にいらっしゃったという経緯でした。

解決当センターが行ったこと

某信託銀行がそんないい加減な相続業務をしているとは信じられませんでした。当センターで同様の案件を扱う場合は、協議前に必ず遺産目録を各相続人に郵送するのが通常だからです。

まずAさんは押印した遺産分割協議書は撤回したいとのことでしたので、信託銀行への連絡文書を代書・送付しました。法的には錯誤無効と言えます。

そのうえで遺産目録に記載された銀行全てに再調査を行い、口座の取引履歴も取得してチェック作業を行いました。すると某信託銀行の遺産目録には記載のない死亡直前の引出金が600万円以上確認されたため、これを含めて正確な遺産目録を再作成いたしました。信託銀行はこのような事実の確認すら怠っていたようでした。

その間、某信託銀行は当初の協議案を撤回し、各相続人に法定相続分を支払うことを提案する手紙を送付してきました。ついには某信託銀行から受任したという弁護士事務所から、半ば脅しのような手紙まで届きました。

しかし信託銀行の協議案には、死亡直前の600万円以上の引出金が含まれていませんでした。600万円もの現金を数日で使い切ったとは考えられません。これを考慮せずに法定相続分を計算すると、この600万円を既に受け取っている相続人だけが得をすることになります。

再作成した遺産目録及び各銀行から集めた資料をAさんにお見せすると、Aさんはこれを元に公平に遺産を分配したいので、全相続人にこれを送付してほしいとご希望されました。

そこで職務権限にて戸籍謄本を収集して相続人確定を行い、各相続人の法定相続分を計算したうえで、遺産目録等の資料を全相続人に送付しました。すると当センターに対して、すぐに他の相続人の皆様からよく調べてくれたという御礼の連絡が多数ありました。その後Aさんが中心となって、600万円以上の引出金を含めて法定相続分で分配する内容で、改めて相続人間で話し合いが行われました。

またAさんのご希望で、某信託銀行に対して遺産整理業務契約の解除通知書を内容証明にて送付しました。

しかしこの後また問題が起こりました。

600万円以上を不正に引き出したと思われる、当初訪ねてきた叔父のBさん・Cさんを含む相続人数人が、引出金を含めて公平に遺産を分割したいという他の相続人の提案を拒否し、被相続人の口座のあった各銀行に対して、自分たちの法定相続分だけ払戻しを請求するという手段に出ました。

当時は預貯金債権は可分債権であると解釈されていたため、「自分の法定相続分だけ払戻ししろ」と銀行に強行に請求すると、銀行はこれに応じることがありました。

Bさん・Cさんたちがゆうちょ銀行を含む各銀行に対してこの請求を行ったところ、不審に思ったゆうちょ銀行から、各相続人宛にこの請求について確認する通知書を送ってきたことで、この行動が発覚しました。

そこで、Aさんのご希望により、各銀行に対して現状を説明し、今後本件は争訟となるおそれがあるので、一部相続人の法定相続分の払戻し請求には応じないよう求める内容証明郵便を、各銀行宛に郵送いたしました。

これにより、払戻し前だった約半分の銀行は請求を拒否してくれました。その後さほど時をおかず、預貯金債権は可分債権であるという判断を取り消す最高裁判例(最高裁判例平成28年12月19日)が出て、B・Cさんたちは法定相続分のみを払戻しすることはできなくなりました。

各銀行の担当者に聞いた話では、その後、彼らは弁護士に依頼して、払戻しを拒否した銀行相手に訴訟を行ったそうですが、敗訴したそうです。

この結果、ようやく彼らは600万円以上の引出金を考慮した協議をせざるを得ないと諦めたようでした。銀行との訴訟に負けたことでまた別の弁護士に依頼したらしく、Aさんを含む他の相続人に対して改めて別の弁護士から遺産分割協議を求める通知がありました。

そこでAさんがこちら側の相続人代表となって、改めてその弁護士と遺産分割協議が行われました。結果、引出金を含めて公平に法定相続分を計算し、各相続人に分配する内容でようやく協議がまとまりました。

その後の遺産分割協議書の作成から、預貯金の解約代行・分配金の計算も相手方弁護士と連携して可能な限り当センターで代行しました。

最終的に3年間以上かかった案件でした。

コメント

Aさん以外の相続人からも感謝の声をいただきまして、本当に嬉しく思います。ありがとうございました。

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本来、信託銀行がきちんと公平に業務を進めていれば、これほどの問題にはならなかったはずです。

また当初手続を進めていたBさんなどの一部相続人も、本当に被相続人の面倒を見ていたのであれば、死亡直前の引出金まで含めて正直に説明したうえで、他の相続人にお願いすれば、多少多めに遺産を相続することもできたのではないかと思います。

ただ最終的には、可能な限り公平に、よけいな訴訟費用などをかけることなく円満に相続が完了できましたのは幸いでした。

同じような問題を抱えている方、お気軽にお問い合わせください。
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